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病草紙
やまいのそうし
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国宝
10面
平安時代・12世紀
京都国立博物館
A甲679
 病草紙は、いろいろな病気や奇形に関する話を描いた絵巻で、当初の規模は不明だが、江戸時代の後期には17図あったことが知られており、現在そのうち「二形(ふたなり)」「霍乱(かくらん)」「陰虱(つびじらみ)をうつされた男」「尻の穴がたくさんある男」「眼病の治療」「歯の揺らぐ男」「小舌(こじた)」「風病(ふうびょう)」「息の臭い女」の9図が京都国立博物館に所蔵されている。
 病草紙の詞書の叙述は一様でなく、直接的に病名を挙げて病状を説明するものと、まず人物を紹介して、その人物の病状を説明するものとがある。後者のタイプでは、人物の住んでいた場所や時代が特定される場合もあり、さらに「二形」のようにより詳しい人物紹介をしている場合もあって、特定の個人に関する病気の話となっている。こうした語り口には、病の紹介というより、病気に関する話を語る説話的な趣がある。特に「眼病の治療」は、目を病んでいた大和国の男のもとに目の医者だと自称する男が来て、鍼(はり)がいいだろうといって目に鍼を打ったために、男の目はよくなるどころかますます見えなくなってしまったという物語を描き、この絵巻の説話絵的な性格をよく示している。
 画面構成についても背景を描かずに病者を中心に人物だけで構成するものと、病者の生活環境を示す景物を描き添え、説話性を強めているものとがあり、「二形」の占師の生活、「霍乱」の田舎家の生活、さらにもっとも充実した豊かさを持つ「眼病の治療」の環境表現は、時代の風俗資料としても貴重である。
 病草紙の画風が同時代の六道絵に近いことから、これを六道のうちの人道の苦しみのひとつとして挙げられる病を描いたものとする見方があるが、こうした画風の共通性は、制作背景の一致というよりは、制作環境の近さによるものであり、病草紙には因果を説くところもなく、また六道に関する経典に典拠を持つわけでもないので、六道絵と言い切ることは躊躇される。詞書や画面構成の特色からみると、当時の六道思想と全く無縁とはいえないにしても、むしろ説話集を生み出した時代の興味を背景に持つと考えられる。