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金光明経 巻第三
こんこうみょうきょう かんだいさん
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国宝
1巻
縦25.0cm 横827.0cm
鎌倉時代・12世紀
京都国立博物館
A甲260
 この写経は、下絵のある料紙を用いて、『金光明経』4巻と『理趣経』1巻を書写したもので、平安時代後期に盛んに制作された装飾経の一例に数えられる。 けれども、この下絵はもともと経典を装飾するために作られたものではなく、下絵までできていた物語絵巻の制作の途中で計画を中断し、それを写経料紙に転用 していることでほかの装飾経とは性格を異にしている。
 この物語絵巻は後白河法皇のもとで制作されていたもので、『理趣経』巻末の奥書によると、 法皇は晩年にある女性と物語絵を作っていたが、その途中で崩御されたので、残された人びとは、下絵までできていた絵巻の制作を中断し、その紙に経典を書写 することにしたという。故人ゆかりの紙に経典を書写することが供養になると考えられていたからである。これは「供養経」と呼ばれ、手紙などの裏に書写され たものがしばしば見られるが、絵巻下絵を用いたものはこれが唯一である。5巻のうち完存するのは京都国立博物館蔵の『金光明経』巻第三と東京・大東急記念 文庫蔵の『理趣経』(国宝)の2巻だけで、巻第二と巻第四が断簡となって残っている。
 この写経は、絵巻の制作過程を目に見える形で残していると ころが貴重である。物語絵は、まず輪郭を中心にした下絵を作り、ちょうどぬり絵のように彩色で埋め尽くし、さらに彩色で隠れた輪郭や細部の線を描き起こし ていくが(作絵)、この作品から下絵がどの段階まで描かれるのかがよくわかる。人物にはまだ目鼻立ちが描かれていないことから、「目無経(めなしきょ う)」とも称される。
 この物語絵の主題については『源氏物語』という説もあり、また隠れ蓑を身につけて忍び歩く人物を主人公とする『有明の別』という物語という説もあるが、経典に仕立てるとき、料紙が順不同でつなぎ合わされており、また完存もしていないので、残念ながら明らかではない。