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光背
こうはい
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重要文化財
指定名称:銅造光背(法隆寺献物)
1枚
銅製鍍金
31.0×17.8(うち柄長6.0)
飛鳥または朝鮮三国時代・推古2年(594)
東京国立博物館
N-196
法隆寺献納宝物には、いわゆる48体仏に本来付属していたものも含む古代金銅仏の光背が多数残されている。これらの光背のほとんどは近年まで48体仏のいずれかに取りつけられていたが、その大半は本体と一致していなかったため、現在では、N-143とN-157を除き、像と光背は別個に保管されている(ただし、N-157については光背の断片が残るのみである)。法隆寺の『金堂日記』によると、承暦2年(1078)頃、同寺金堂には橘寺から移された49体を含めると100体を優に越える数の小金銅仏が安置されていたことが知られる。それが時代の推移とともに、あるものは光背を失い、あるものは本体を失って光背だけが残るなどして、次第に像と光背が錯綜しながら今日まで伝来してきた状況を考慮すると、現存する像と光背から、本来の組み合わせを復元することは非常に難しいといわねばならない。しかし、古代金銅仏の遺例のほとんどが光背を失っている中で、これだけのまとまりをもって、しかも質・量ともに充実した内容で光背が残る例は他にみず、その資料的価値は極めて高い。
以下、その概要についてみると、まず、N-195に属する38点は本来法隆寺金堂天蓋の飾り金具であった(12)(N-195内の小番号、以下同様)を除いて、すべてが仏像の頭部後方に配される頭光形式のものである。その設置方法は2通りに大別され、像の後頭部に設けた柄(または柄穴)に直接取りつけるものと台座に支柱を設け、像の頭部の高さでその支柱に取りつけるものとがある。また、技法面では銅板からつくるものと鋳造によるものとに分けられる。銅板による場合は、さらに、薄手の銅板に文様を刻線で表わすものと厚手の銅板で文様を立体的に表わすものとに大別される。鋳造によるとみられるものは、現在のところ、X線写真で鬆をはっきり確認できる(37)だけであるが、(18)~(28)、(38)など厚手の銅板によるとみられる作例は、その立体的な文様の仕上がりに(37)と似た感覚もあり、現段階ではこれらがすべて銅板製で鋳造によらないとは必ずしも断言できないものがある。
主な作例についてみていくと、(1)は輻状文、連珠文、火焰による構成がN-143の脇侍像の光背と類似し、(2)の火焰状のパルメット文は根津美術館蔵つちのえ午年(658)銘光背と同趣である。(3)は(2)に通じるものがあり、以上の3点は全体に古様な作風を示している。光背に化仏を表わす例として(6)(16)があげられるが、(36)のように楽天を表わす珍しい作例もある。(11)は虺龍文(きりゅうもん)系の火焰や宝塔の意匠に法隆寺救世観音像の光背と通ずるものがみられる。
(13)(25)は豊かな装飾性を示すが、なかでも束で輻状に区画された中に花文を配する文様帯が法隆寺伝来の押出仏(例えばN-198の阿弥陀三尊及び比丘形像)の光背にもみられることは興味深い。特に、(13)と作風の類似する(14)(15)が本来N-163、N-164に付属していたと推定され、さらにこの2像が前記押出仏中の脇侍菩薩像と顔立ちの似る点はあわせて留意される。
(21)(27)(28)は文様を立体的に表わす光背であるが、(21)の蓮花文が天智9年(670)の火災後の再建期法隆寺の瓦と類似し、(27)における火焰の基部に渦文を表わす意匠や花文を連珠で繋ぐ意匠、さらに(28)の蓮花文の形などが、やはり同期の製作と思われる法隆寺伝橘夫人念持仏の光背の一部と共通しており、この種の光背の年代を考える上でも示唆的である。なお、(29)(30)(31)(32)の4点はいずれも江戸時代の後補とみられるものである。
N-195に属する光背を通覧して気づくことは、そこに示された様式が極めて多彩な点である。それは、(11)~(16)、(25)~(27)のように優れた作域を示す作例がある一方で、(5)(33)(34)のようにやや稚拙なものがあることも含めて、48体仏各像にみる多様性と符号するものがある。また、(18)~(28)の光背は、文様の中央に稜をたてて立体感を出しているが、これは高松塚古墳出土の飾り金具にもみられる趣向であり、当時の他の金工品との関連性も見逃せない点である。
頭光以外の作例のうち、「甲寅年」の銘をもつN-196号は鋳銅製で一光三尊像に付属していたものである。特に周縁に飛天を廻らせる意匠は、法隆寺金堂釈迦三尊像光背の本来の姿を復元する上でも貴重である。「甲寅年」については594年に比定される可能性は高いが、その製作地を朝鮮、日本あるいは中国のいずれに当てるかという問題とともになお検討の余地を残している。
N-197は銅板透彫り製で大ぶりの蓮弁形光背であるが、銅板打ち出しによる化仏(押出仏)を取りつけた珍しい作例である。その火焰状に表わすパルメット文はN-195の(2)やN-158の宝冠にみられるものと同趣であり、全体に古様な作風を示している。