言語:
  次の作品 > 
  検索結果に戻る  
  < 前の作品  
地獄草紙
じごくぞうし
画像一覧
部分一覧
スライドショー
国宝
指定名称:紙本著色地獄草紙
1巻
紙本着色
縦26.5cm 横454.7cm
平安時代・12世紀
奈良国立博物館
644
詞書(ことばがき)と絵を組み合わせた六つの段と、絵のみが残る一段の計七段からなる絵巻で、隋の闍那崛多(じゃなくった)が漢訳した『起世経(きせきょう)』に説かれる十六小地獄を表わしたものである。地獄には八大地獄があり、その周辺には十六小地獄があるとされる。『起世経』は、(1)黒雲沙(こくうんしゃ)、(2)糞屎泥(ふんしでい)、(3)五叉(ごしゃ)、(4)飢餓(きが)、(5)燋渇(しょうかつ)、(6)膿血(のうけつ)、(7)一銅釜(いちどうふ)、(8)多銅釜(たどうふ)、(9)鉄磑(てつがい)、(10)凾量(かんりょう)、(11)鶏(とり)、(12)灰河(かいが)、(13)斫截(しゃくせつ)、(14)剣葉(けんよう)、(15)狐狼(ころう)、 (16)寒氷(かんぴょう)、の小地獄をあげているが、現存する場面は(2)(10)(9)(11)(1)(6)(15)の順となっており、順序が入れ替わっている。また米国・ボストン美術館が所蔵する(7)一銅釜処にあたる断簡は、かつて本巻の一部であったものと考えられる。なお絵第七段は、『起世経』の狐狼地獄(ころうじごく)ではなく、『大楼炭経(だいろうたんきょう)』に説かれる狼野干泥梨(ろうやかんないり)とする説もある。
詞書は「また別所あり」で始まり、『起世経』の該当部分に加えて、罪人が地獄に堕ちる原因となった現世における罪状を記している。
絵は、柔軟な描線(びょうせん)に、抑えた暗色系の彩色を施している。全体に重厚な雰囲気が漂うが、ある種の超越した穏やかさが感じられる。図様には鉄磑所のように中尊寺経見返絵(ちゅうそんじきょうみかえしえ)にも見られるものと、鶏地獄のように中国・宋の影響を受け入れたことが顕著なものがある。現存する地獄草紙・沙門(しゃもん)地獄草紙・餓鬼(がき)草紙・辟邪絵(へきじゃえ)・病(やまい)草紙など、いわゆる六道絵巻(ろくどうえまき)のなかで、もっとも精妙な作風を示しているということができる。
なお六道絵巻は、後白河法皇(ごしらかわほうおう)(1127-92)が制作させ、蓮華王院(れんげおういん)の宝蔵に納められていた「六道絵」にあたるとする説が有力である。
本巻は、明治時代には東京・大聖院が所蔵しており、のち神奈川・原家を経て国有となった。東京国立博物館が所蔵する地獄草紙(岡山・安住院伝来)と並び、六道絵のなかで著名な作品である。